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信念にブレ無し、浅井康太が『本物』のチャレンジャー! 東日本大震災被災地支援 第54回オールスター競輪(G1)は今日5日に決勝戦を迎えた。勝ったのは浅井。台風12号の接近により4日目が順延するなど波乱に富んだシリーズを、鮮やかなカマシで決着させて弥彦親王牌以来で2度目のG1制覇に輝いた。深谷知広は主導権取りが叶わずに大敗。山口幸二が浅井に巧マークから2着で、賞金額はグランプリ行きへ安全圏に突入した。大立ち回りを演じた佐藤友和が3着。長塚智広が最終ホームで佐藤慎太郎を押し上げて失格。自身と伏見俊昭(再入7着)、山内卓也(再入6着)、佐藤慎(再入8着)は落車した。
浅井康太は2度目の戴冠よりも、山口とワンツー決着が嬉しかった。ゴールから数分が経って、「後輪がハスって、一瞬止まったのに。幸二さんが勝っても良いぐらいの気持ちで仕掛けたから」と、表彰式の前に一度戻った控え室で安堵の表情を浮かべた。
深谷と山内の愛知組とは、袂を分かれた。発走前には重度の緊張が襲う。「もう一度優勝したい。弥彦で優勝した瞬間を覚えてないから」と、前検日に語った欲求を満たすからではない。地元ビッグへ、より入魂の山口に前を託されたからだ。ビッグパワーの深谷に、佐藤友や長塚と策士がそろう。力を出し切れる保証はない。同級生の柴崎俊光に「すんげえ、緊張している」と、決戦の直前、地乗り後に打ち明ける程、精神的に追い込まれていた。
しかし、「しっかり仕掛ける」とシンプルなミッションを遂行した。そして勝った。「ちょっとタイミングがズレた。1コーナーでハウスした。早めにって仕掛けた結果」と、最終2センターではローリングするなどの執念が、山口の猛追走まで封じた。
9月3日、本来なら大会4日目が開催されるはずだった日は、休養をメインに調整した。ほとんどの選手がローラー台で乗り込む中で岩見潤が「浅井? 何時間も寝てた、そして食ってた。普段通りだね」と語る程、疲労回復に努めた。
結果オーライだった二次予選、準決勝を振り返り、準決勝終了後には念入りにローラー台で、フォームチェックを兼ねてクールダウンに努めた。これこそ、浅井にはストロングポイント。右手と左手で、ハンドルを握る角度が違う。右手はハンドルの湾曲部、左手はハンドルの下部に添える。そして、左足の回転具合をチェックして、「これ(左足)がしっかり回るか。落車して体がズレれば、これが回る様に修正していく。回せれば大丈夫」と、度重なる落車禍から脱出したのは確かな根拠と、強心臓からだった。
ブレがない。そして、2個取って本物と言われるタイトルホルダーへの評価にも興味はない。「一戦、一戦の積み重ねが大事。弥彦の時と同じで4番車。格下だし、しっかりと頑張るだけ」。全くおごる素振りを見せず、今後も挑戦を続ける。
深谷知広は主導権取りが叶わなかった。赤板付近で突っ張りか、飛び付き狙いなのか、変幻な佐藤友のダッシュと、長塚にインから中団六番手を明け渡した時点で、心身の消耗を招いた。打鐘過ぎ四角では佐藤友と接触し、バランスを崩したのが致命傷となり、「いつも通り外を踏んでいこうと思ったら…。すくわれたが、あそこ(赤板過ぎ)で前に出ていければ…。(佐藤友の左)肩が入ったし…」と、悔しさをかみ殺した表情を見せた。
愛知組には佐藤友のレース運びが誤算だった。山内卓也は「深谷とは、行ける所から行く作戦。友和のやる気がね、想定外。あんなに踏むとは。打鐘? 深谷の踏み出しがきつくて、俺は内に。ホームでドッキングしようとしたら、深谷が踏めずに」。
山口幸二は地元ビッグ制覇を叶えられなかった。愛知組とは袂を分かれた。最終2センターでローリングした浅井を捕まえきれず、「脚がいっぱいだったよ。(佐藤)慎太郎に当てられたのが痛かった。愛知? 完全に別線だったよ」。最終1センターで前団から煽られたプレーを敗因に挙げた。だが、賞金額は3位にランク。グランプリ行きをはっきりと視界に捕らえた。
佐藤友和が序盤では最も目立っていた。後攻め七番手から青板で浅井を押さえ、打鐘前には強弱の効いた絶妙なペースで別線を翻弄した。打鐘で金網近くの大外に位置した深谷は、山内が踏み遅れる程のフルダッシュも報われずに叩けずじまい。佐藤友はインから山内や長塚の牽制でバランスを崩しながらも、そのまま先行態勢に入り、そして浅井のカマシに屈した。深谷の番手へ飛び付けていれば、V機は広がっていたはずで「(深谷に叩きに)来てもらいたかった。浅井のカマシ? 自然とあの展開になっちゃう。全部ひらめきで走った。逃げてもいいと覚悟があったけどね。前に前に踏めていたし、しっかり踏み込めてはいた。いやー悔しい。賞金額でグランプリ? 全然見えてない。(優勝を)狙わないとね」。大ギア時代に反して、クラシックに3・69ギアを回す男。「やっぱり、69が合っているよ」と手応えだけは確かにして、検車場を後にした。
長塚智広は落車失格。最終ホームで佐藤慎を押し上げたプレーが自身と伏見俊昭、山内卓也、佐藤慎太郎の落車を誘発させて、「お客様に申し訳ないことを。あそこでは(後方へ)引けなかった」。名古屋ダービーでも決勝で失格。言葉も少なく控え室に消えた。
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