各地のF1優勝者を中心に選抜された選手で争われる共同通信社杯。数あるG2の中でも自力型の数が多くハイレベルなシリーズが展開される。今年も勝ち上がり戦はサバイバルの連続で、数々のビッグネームがトーナメントの途中で姿を消した。
9名の決勝進出者が決まり、それぞれの作戦を共同記者会見で述べる時、合志は逡巡した後、「別線の岡部さんに付く」と結論を出した。結果的には大正解。追い込み型として『先行の番手を攻めるべきでは』という葛藤を乗り越え、自らの持ち味を生かし切ろうという選択が初めてのビッグタイトルをもたらした。
「かなり悩みましたね。今回は山崎君のデキが良かったので、追い込みの僕はハコで勝負するべきではとも思ったんですが、どちらかと言うとまくりのスピードに乗せてもらって、そこから勝負する方が得意だし、今回は自分自身の調子も良かったので優勝したかった。考えた結果、岡部さんに付きました。多分、(山崎の番手を)競ったら抜けないとも思いましたね」
レース中、合志と岡部の息はピッタリと合っていた。
「作戦はほとんど何も決めていませんでした。岡部さんに任せていましたし、絶対に仕掛けてくれるだろうと信じてました。僕が“ここで行ってくれ”と思った瞬間に仕掛けてくれたんで、これは出切れるなと思いました。直線でちょっともたついてしまったけど、ハンドルを投げた瞬間に差せたのは分かりました。岡部さんには本当に感謝しています」
7度目のビッグ優参でつかんだ栄冠。また一つの階段を上り、九州を代表する追い込みへと成長を果たした。
「G2は獲りましたけど、まだG1がありますから、そこを目標に頑張ります。タイトルホルダーと呼ばれるにはまだ早いと思うので、そう呼ばれるに相応しい努力をします」
差されはした岡部だが、敗れてもなお強しという印象を強烈に残した。後輩たちと別れての別線勝負だが、自らの力を出し切って表情は明るい。
「今日は本当に疲れました。アップの時から完全に集中して自分の世界に入ってましたから。今日は(山崎とは)別線なので、自分の力を出し切ることだけを考えて。展開も自分の思い通りに作れましたね。市田を出させれば粘るだろうし、手島も三番手でジッとしてはいないって考えてました。もうちょっと(自分の仕掛けが)遅めだったらとも思ったけど、自分が勝ちたいという気持ちを出して失敗するより、合志に差されてもいいから出し切るレースをした方が結果的に良いので、今日は満足しています。素直に合志の優勝を祝福します」
先行一車の展開を生かせなかった山崎はやはり悔しさを滲ませた表情を見せる。
「金成さんと話していた通りのレースになったんでけどね。岡部さんは絶対に一度は叩いてくるだろうし、手島さんの追い上げもある程度は考えていたんです。僕のカカリ自体は悪くなかったと思うんですが、ゴチャついたところを行かれてしまったんで仕方がない…」
金成は納得の表情でレースを振り返った。
「山崎は良いレースをしてくれました。もうちょっと援護したかったんですが、手島さんと絡んでしまった上を行かれたんで、対処のしようがなかったですね。これで競輪祭の特選の権利も取れたし、全日本選抜には出られないので、次はヤンググランプリに向けて頑張ります」
市田も前日の段階では悩んでいた。考え抜いた末に出した結論は、やはりイン粘りだった。
「このメンバー構成なら、ある程度は読めるでしょう。(オッズを見て)お客さんも分かっていたよね。岡部さんは絶対にあの動きをするし、山崎は先行する。僕はインで粘るしかないでしょう。ちょっと遅れてしまったのが痛かったな。悔しい。でも、今回は正直言ってそれほど良いデキではなかったし、その中でもこうやって決勝で戦えたのでヨシとします。次、完調の時にはきっちりチャンスをものにできるよう頑張りますよ」
手島慶介の動向にも注目が集まった。流れの中で山崎の番手に追い上げたが、金成にさばかれて万事休す。「行くつもりはなかったんだけど、詰まった時に自然と前に出てしまった。なんでだろう。あれで岡部さんを引き出してしまいましたね。前の二人に申し訳ない…」
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