まさに無欲の先行が勝利の女神を微笑まさせた。記念優勝すら一度も無く、G2の決勝も初めて。開き直った打鐘先行での見事な押し切り勝ちに平原康多は満面の笑みを見せる。
「打鐘の手前では八番手でしょう。あのままじゃどうしようもないからイチかバチかのカマシを打った。ガッツポーズ?、そりゃ自然に出ますよ(笑)」
渡辺の好アシストも平原の逃げ切りに大きく影響した。純粋な同地区ではないが、渡辺に対しては信頼を寄せていた。
「渡辺さんは番手の仕事もしっかりしてくれる人なので先行策も想定していた。武田さんの位置、仕掛けも見えてたし、後は自分がどこまで我慢できるかですからね」
7月はあっせん停止で悔しい思いをしたが、1か月半じっくりと練習した成果が早くも出た。
「親王牌、サマーナイトをテレビで見てる自分が悔しかったですからね。でもその時期の練習、休養で心身共にリセットされてたのがこの結果を生んだんだと思います」
平原マークで武田のまくりをブロック。あとは差すだけの形になった渡辺晴智は大薗に内を掬われ万事休すだ。
「三角で止めてそのまま踏む訳にはいかない。車輪を外に差したまま待ってる時に掬われて当たられた…。まだまだ甘いですね、勉強し直しますよ。でも東日本地区の平原君が勝ってくれたのは良かったと思う」
絶好の三番手をキープ。車間を詰めた勢いでまくった武田豊樹は仕掛けどころを悔やむ。渡辺の強烈なブロックで失速してしまった。久々のビッグ決勝だけに気合も十分入っており、それだけに悔しさを表に出した。
「何であそこで踏んでしまったのか…。コーナーに入ってからまくり追い込みなら渡辺さんもブロック出来ないでしょう。平原君が流しながら駆けてたから、どうしても詰めた勢いで仕掛けちゃうんです。これは普段先行、まくりでやってるから仕方ないのかな…。ここを勝てば賞金でグランプリの望みはあったが、もう無理でしょう。G1優勝?、そんなに甘くはないですよ(苦笑)」
武田マークから俊敏に内を突いた大薗宏だったが、大塚、加藤らとの接触で無念の落車。幸いケガは大事に至らずに済んだ。
「関東から優勝者が出たのが救いかな。武田君が頑張って踏んでたし、ちょっと内に突っ込むのが遅れた。でもこのステージで戦える自信は付きました。四角では一瞬夢も見れたし(笑)」
2着強襲の渡部哲男だが笑顔はない。勝負ところでの走り方を反省しきり。
「武田さんは駆ける雰囲気じゃなかったのかな…。打鐘前に武田さんが来た時にもっと踏み込んでおくべきだった。勝ち上がりならあそこは武田さんも突っ張るところだし先行争いになると思ったが…」
目標不在で動向が注目された加藤慎平も絶妙なコース取りを見せたが、大薗と接触して落車の不運。加藤もケガは軽症で済んだのが不幸中の幸いだった。
「コースは完璧に見えてたね。でも大薗さんも締め込んで来るところだし仕方がない。落車も大した事ないので心配ありません。切り替え?、あのまま平原君ラインで九番手を覚悟する勇気はなかった(苦笑)」
大塚、小川らも落車の後は自分で帰り支度ができる程度の軽症で済んだ。 |