「結果を出さなければ何も言えませんから」。 市田は優勝会見を切り出した。初めてG2制覇。今まで何度となくビッグレースを勝つチャンスはあった。そして、そのチャンスを逃し続けてきた。その中で3年前に下した戦法チェンジという大きな決断。いくつもの紆余曲折を経て、ようやく大きな成果を手にした。
「先行を捨てて、自在に走るという決意をして、一緒に頑張ってきた師匠と意見が衝突したこともあった。それでも頑張ってきて良かったなと思います。稲垣君とは西武園オールスターでも連係したけど、その時は失敗した。だから、今回は同じ失敗を繰り返したくないという気持ちが彼から凄く伝わってきました。最終HSではマズイ!と思ったけど、気持ちで佐藤君を抜くことができた。G2だけど本当に嬉しい」
冒頭の“結果を出さなければ言えない”という言葉の意味を語りだす。
「戦法を変えて、これからは後ろで先行屋を引っ張っていく存在にならなくてはと考えていたんです。松本整さん、内林久徳さんは辞められたけど、近畿には渡辺一貴さんや大井啓世さんが頑張っている。でも負けずに若い力も頑張らなくては。今、近畿は元気がないので、これから僕がやることをやって、盛り上げていくという気持ちで行きます」
2着には佐藤友和が粘った。山崎芳仁との二段駆けで近畿勢に対抗すると目されていたが、二人の狙いは別のところにあったようだ。佐藤は、「前を取ってカマシが最初の作戦だったけど、明るい内とは風が変わってしまいましたね。山崎さんは“僕に獲ってほしい”と言ってくれたので、僕もそれなりのレースをしようと思っていました。とにかく市田さんを一気に交わそうと思って全開で踏み上げたけど、出切った時点で脚は一杯だった。まだ自分の力はこんなものという気持ちもあるけど、正直悔しいですね。次はやり返しますよ」
山崎はタイミングを逸して見せ場を作れなかった。 「プロテクターも借りてたし、ガッツリ競るつもりはあったけど、意味はないからカマシで行こうって話したんですよ。でも稲垣さんがあんなに早く来るとは思ってなかったので、完全に読みが外れてしまった。ピラピラしちゃいましたね」
駆けた稲垣裕之は流れる汗を拭いながら、満足気な笑顔を見せる。 「自分が勝つのがベストだけど、ラインの市田さんが勝ってくれたから。西武園でも失敗しているし、これが僕のやるべきことだと思っていました。いずれにしても、ぼくらにはこの展開しかチャンスはなかったでしょう」
番手を獲りきった兵藤一也だが、佐藤の踏み出しに離れて万事休す。「佐藤君が強かった。付いていけてないので、たらればでは何も言えません」。
好位狙いを宣言していた浜口高彰だが、近畿勢の作戦に翻弄されてしまった。
「近畿のカマシ先行は全くの予想外でした。あれで完全にアテが外れてしまったね。僕らの切り替えを誘ったほうが、向こうは戦いやすくなると思っていたからね」
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