ゴール後は大きく両手を挙げて地元ファンの声援に応える後閑信一。表彰式でも殿下とガッチリ握手を交わし優勝の喜びに酔いしれた。
「殿下には自分から握手を求めました(笑)。『君から買ってたよ』と言われてとても光栄です」
レースは前を任せた手島慶介が自らまくりを打ち、後はゴール前で差すだけとなった。
「手島君はいつも前で頑張ってくれてた選手。初日から任せたのがこの結果に繋がりましたね。海老根君が引いてきたのでマズイと思ったところで手島君が仕掛けてくれた。これからの前後は話し合いながらになると思うけど、後ろでも安心して任せられますね」
2日目以降はどのレースも俊敏な動きを見せていた。初日の失敗が後閑を奮い立たせたと言える。
「初日に普段付け慣れてない小嶋(敬二)さんの三番手とはいえ、千切れてしまいお客さんからもかなりお叱りを受けた。その事で自分の気が引き締まったと思う。ダメな時は罵声でもいい。頑張れた時は声援、やはりお客さんの声が何よりの励みになるのでバンバン声を掛けて下さい」
宮杯を山崎芳仁が獲った事で新旧交代がなされたと言われたが、36歳の後閑がまたこれにストップを掛けベテラン健在を示した。
「若い時からじっくりと土台を作ってきた自負はあるので、40歳でも特別の決勝に乗れるように頑張っていく。最近は若い自力型もどんどん出てきてるのでそれををしっかり育てるのも僕達の役目ですね」
海老根から切り替えた手島慶介の判断力も抜群だった。後ろに先輩が付いてるという事もあり、早目のまくりとなった。
「後閑さんはデビューした時から世話になってる人ですからね。良い形で恩返しが出来たと思ってます。それでも四角を回った時は『グランプリ出ちゃうのか』なんて思いましたが、これが今の力ですね。でもまたチャンスがあると思うし、その時は獲れる様に狙っていきます」
人気の佐藤慎太郎は山崎が内を掬われた時点で万事休す。それでも3着に突っ込んだあたりはさすがのしぶとさだ。
「途中までは作戦通りだったんだが…。山崎が『慎太郎さんが獲ってくれれば』みたいな事を言ったので、『自分が勝つ競走をしろ』と言いました。いくら別線でもあの岡部さんの動きは計算外ですよ。かなりの数、決勝に乗ってるのに1回しか獲れてない僕って…」
山崎芳仁も岡部の動きでタイミングが狂ってしまい力を出し切れずに終わった。
「外に渡部君、海老根さんが内に詰まってるのも確認して、そろそろ駆けようと思った所で岡部さんにしゃくられバックを踏んだ。ビックリしてどうしようもなくて…。参りました」
奇襲策となった岡部芳幸は思い切りの良いレースをしたかったため、あのような競走になった。
「1周半、思い切って踏みたかったのでああいう形になりました。山崎君とは別線だったし仕方がない。渡部君がもう少し早く仕掛けてくれればチャンスだったかも。内藤君が付いてくれれば面白かったと思うんだが…」
渡部と連係した合志正臣は2人で反省会。
「渡部君が叩きに行って一旦止めたんで僕の前に引き込もうと思ったらまた踏んで行っちゃったね。一旦中団に入って山崎君が駆け出しで山に上がったら内をしゃくるのも面白かったかも」
渡部哲男も仕掛けどころに迷いながらの競走になった様子。合志と手振りを混ぜながらレースの流れを振り返る。
「山崎君が突っ張ったんで一旦外併走で休んで、流したところを行こうとしたら内から岡部さんが来てた。山崎君と海老根さんが踏み合う形になると思ったが…」
海老根恵太は中団取りに失敗もこれからという時に切り替えられて出番を失った。
「山崎君と渡部君が踏み合ったし、構えてこれからという時に切り替えられてしまって…」 |