山崎が冷静且つシビアなレース運びで、自らをビッグ初Vへと導いた。核弾頭に渡辺、成田、森田を三、四番手に、強大な福島カルテットの番手回りで、「本命だから、ファンの人気に応えなくては」と重大な使命を帯びて臨んだこの一戦。渡辺が先手奪取に成功したのも束の間、“驚速”のダッシュで巻き返した永井に流れが傾く大ピンチ。それでも、渡辺から岩津へ切り替えた直後、最終バックからまくりを繰り出し、平原ら後続を軽々と振り切った。
「一瞬、ヤバイかと…」と、渡辺の踏み出しに若干踏み遅れるハプニングを思い起こした後、山崎が優勝会見の部屋で喜びを語り出した。
「作戦は(渡辺)一成任せ。どこから仕掛けるか分からず、離れてしまいました。4人で話し合ったのは、最初の位置取りだけ。中団からと決めたけど、それ以上は。考えてもどうせその通りにはならない。自分はダッシュがない。ただ、遅れても(差を)詰めていけば何とかなる。バックでは間に合わないと思って切り替えた。最後は後ろを見て、誰も来てないから(優勝を)確信しました。嬉しいのはもちろん、ファンの期待に応えられてホッとしています。番手は始めてだし、変な緊張感もありましたから」。
出世レースを制し、潜在能力、練習環境を考えても山崎には更なる飛躍が期待したい。
「来年は、地元(平)で全日本選抜。それ一本に照準を絞りたい。もちろん、その前にはGIIIを獲りたい。今まで師匠(添田広福・49期)に迷惑を掛けてきた。今回も『多分、本命だからシビアに…』とアドバイスを頂いたし。兄弟子の(佐藤)慎太郎さんからも、同じアドバイスを。武田(豊樹)さんとは同期だし、早く追いつき追い越せるよう頑張ります」。
ここからは残念組のコメント。
山崎のVに少なからず貢献しながら、渡辺は憮然とした表情で、「脚を使い切ってないから悔しい。永井とは脚質、脚力をお互い知り尽くした間柄。カマシで出切れば、ひと呼吸入れなくてはならない。その瞬間、永井に巻き返された。出切ったとき、良い感じで踏めていたから、少しだけ油断していたのかも。まあ、山崎さんが勝ってくれただけでも…」。
成田は、山崎とのワン・ツーが叶わずの結末に反省しきりだ。慣れない三番手回りを経験し、「ファンには申し訳ない。追い込み屋の苦労が少しでも分かった気がします。岩津さんが車体を振って、コースを迷った。山崎さんの外に行けば、2着だったかも」。
スーパーダッシュで渡辺を叩いたが、永井は8着大敗に唇を噛んだ。「緩んだ瞬間、行くしかないと。後攻めになり、周回中に岩津さんと作戦を考えました。力んだ分だけ、粘りがなかった」。
岩津には絶好の展開だった。最終バックで最後方回りだった昨年の本大会と一転し、永井マークで大チャンスが巡ったが「脚があれば、勝てた。一瞬離れたけど、踏み出しに付け切ったのに。バックで永井が少しタレたのもね…」と天を仰いだ。
「1着じゃなければ意味がない。成田さんが遅れた分、伸びが…」と平原が嘆く傍らで、五十嵐は「最終バックで内か外か迷ってしまった」。
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