武田が逃げる、小嶋が怒涛のまくりで襲い掛かる。大方の予想通りの展開となったが、ゴール板を真っ先に駆け抜けたのは神山でも小嶋でもなかった。つい先日の全日本選抜で最後の椅子を手に入れた加藤が鋭く内を突いて伸び切った。
「今年何度も世話になっている小嶋さんの後ろだし何も考えなかったのが良かったですね。小嶋さんが苦しい外併走から仕掛けてくれたし自分はしっかり付いて行く事だけを考えてた。バックから内に斬り込んだのは頭で考えての判断ではなく体が反応しましたね。今年後半はあまり荒いレースはなかったが久しぶりに荒かった(笑)。でも攻める気持ちで前に踏めたのが正解でしたね」
グランプリ制覇を「感無量」という表現で爆発させた。本来なら派手なガッツポーズでウイニングランと行きたいところだったろうが、後閑のガッツポーズで機会を失い苦笑い。
「後閑さんの方がスピードに乗ってたし、抜かれたかなと思ったんですが、バックでお客さんに『おまえが勝ってるぞ』と言われてえっ?と思ったら小嶋さんも『勝ってるぞ』と言ってくれて勝利を確信した。僕が勝った事で80期代の選手の刺激になればと思う。もう90期がデビューしてるのにグランプリ出場が僕と武田さんだけじゃ情けない」と若手に向けてのエールで締め括った。
1/8輪差に泣いた後閑は苦笑い。小嶋のまくりに絶妙なブロックを見せたが…。
「小嶋さんが外併走から仕掛けるのは分かったので、仕掛けた瞬間にブロックして小嶋さんのスピードを止めるつもりだった。直線では僕が伸び切ったと思ったが…。まあ来年のグランプリの予行演習のつもりにしときますよ(笑)」
結果的には加藤優勝に貢献した小嶋は、強烈なブロックに泣かされた。
「後閑は何とか乗り切ったが、神山さんのがキツかったね。今年一番の苦しいブロックだったよ。あれがなければ僕はまくり切ったと思うが、まあ慎平が勝てたんでね。あいつは1年間1番車だから好きな位置を取ってもらえるのは有利だね」
悲願のグランプリ制覇達成かと思われた神山だったが、加藤に弾かれた時点で全てが終わった。
「武田君の組み立ては良かったと思う。ただちょっと小嶋君を意識して構えすぎてた。バックでは小嶋君が外々を踏んできてるし何とか止めたかった。加藤君が内を掬ってきたのが分からなかったので、慌てて踏み込んだが…。また来年同じ舞台に立てるように頑張りますよ」
初出場ながら、先行というテーマはクリアした武田。満足感とまではいかないが、今後の課題も見えたようだ。
「いいペースだったしバックでは優勝まである展開だったと思う。ただ四角からの踏み直しを焦ってしまった。先行での経験をもっと積まなければ、と思いましたよ」
アクシデントに見舞われたのは福島コンビ。最終バック手前で佐藤が伏見の後輪と接触して落車。この接触で伏見の後輪も破損して万事休すとなった。
「最終二角でこれからと思った時に慎太郎の車輪が僕の後輪に接触して壊れた…。踏んだが、あれじゃ前に進まないでしょう…」
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