加藤慎平のまくりを凌いで特別初Vを達成の後閑信一選手は長年の苦労がようやく報われ、表彰式では感無量の表情を見せた。 |

後閑にとって手が届きそうで届かなかった特別タイトル。しかし、選手生活16年目、特別の決勝に乗る事13回目にして、最も信頼を寄せる神山との連係でついに栄冠を掴み取った。それまでには酷い腰痛に苦しみ、鳴かず飛ばずに近い状態に落ちた事も。それだけに、一際感動的な優勝だった。
「(最初に思ったのは)やっとこの日が来たかな。でも、この道は自分の通る道だったと思います。戦法的には神山さんにお任せで、神山さんが先手取ってもまくりでも自分は番手の仕事をするだけ。神山さんにはデビューしてからお世話になりっぱなしで感謝してます。(佐藤の追い上げは)神山さんが先手を取った時点で誰か来るだろうと思っていたので冷静に対処出来ました」
昨年8月の久留米記念制覇、オールスター決勝2着で復活の狼煙を上げると、その後も阿佐田杯での完全V、1月大宮記念でのVを経て、頂点まで登り詰めた。この実力は紛れも無く本物だ。
「20代後半からトンネルにいて、どこを掘ったらいいかも分からない状態でした。それが6月くらいから光が見え出して、そこに向かって練習あるのみと思えるようになりました。久留米の前の弥彦S115着の最終日の突っ込みがいい感じで、同じ感じで久留米も取れました。それをオールスター、立川記念、大宮記念でも出せて確かなものになってるのは心強い。今後2回、3回と数多くタイトルを獲れるように頑張ります」
神山は直線半ばに失速。しかし、後閑が自分の後ろから優勝を獲ったのは我が事のように喜んでいた。
「(先行したのは)後ろが後閑だし、川口さんも付いてくれたから。モタモタしてたら加藤君に突っ張られる可能性もあるから、押さえる所だけ気を付けて思い切り踏みました。あとは後閑の仕事。自分は勝てなかったけど、後閑が勝って、今日はとにかく嬉しい」
3333着と表彰台に乗る健闘を見せた川口からも笑顔がこぼれる。
「何か普段のレースと同じ感覚で走ってしまって勿体なかったなって。ただ、三番手の競走は出来たんじゃないかな。決勝に乗った事で他の東京勢の励みになると思うし、自分ももう一度頑張れるんじゃないかな」
一方、2着にもこれまで見せた事が無かったような険しい表情で引き揚げて来たのが加藤だ。
「レースも考えた通りの展開だったし、踏み出した瞬間に“行ける”と思ったんですが…。自分が獲りに行くレースは出来たと思いますが、三番手の川口さんのブロックが痛かった。自分のスピードにも競走内容にも納得してますが、2着と言う結果は悔しい」
加藤追走の山田は競りに来た内林をアクシデントで落車させてしまい失格。悔やまれる結果にも、いつもの調子で淡々と振り返った。
「慎平の踏み出しに離れないよう前に踏んだ時にバック踏まれて、横に避けたんですが、内林さんにハウスしてしまいました。どうせなら慎平に獲って欲しかったけど、これを悔しさに変えられれば、あいつはもっと伸びるんじゃないかな」 |